kahoさんの論文がオープンアクセスになりました

大事な事は繰り返し説明して、より多くの人達に伝える事が大事です。
そいうわけで、

Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency


理化学研究所小保方晴子氏らが発表した「STAP」細胞について、理研統合生命医科学研究センターの遠藤高帆上級研究員が遺伝子解析を行い、その細胞が実際には論文で主張されているものとは異なる、という解析結果が論文として掲載されました。掲載誌はあっと驚く「日本分子生物学会誌(電子版)」です。

同じ記事を何度も掲載したい、という事ではなく、「論文がオープンアクセスになっているので、興味のある方は読んでみませんか?」、というお知らせです。

ここは、子ども達に説明している関係上「kahoさん」と遠藤氏をよんでいますので、お含みおきください。

何の話だったっけ?

それは「STAP」という名前で呼ばれていた、「新しく発見された特別な細胞」、と小保方晴子という研究者が主張した「正体不明の細胞」についての話です。

論文は、小保方晴子を筆頭著者として「Nature」という科学誌に発表され、非常に大きな注目を集めましたが、その後、実際にはその細胞が本人が主張している特徴を持った「新しく発見された特別な細胞」ではない、という疑惑が起きました。


その論文は、理研という所で「bioinformatics」という分野の研究をしているkahoさんによって検証されました。

kahoさんは、インターネット上に公開された「STAP」のものとして提出されている遺伝子データを解析して、「STAP」のものだとして提出されていた細胞のデータが、実際には「ES細胞」という広く実験に使われている万能細胞に非常によく似ている事を見つけ出しました。


kahoさんはその論文を、「日本分子生物学会」の学会誌の「Genes to Cells(電子版)」( http://onlinelibrary.wiley.com/ -> 「Cell & Molecular Biology」 -> 「 Cell & Molecular Biology」 ->  「Genes to Cells」)に掲載しています。

そしてその論文は、kahoさんの希望によって「オープンアクセス論文」として公開されています。オープンアクセス・フリーアクセスというのは、その論文を読みたい、と希望する人が、誰でも無料で読むことができるようにする事です。研究者でなくても、本当に文字通り、誰でも無料で読むことができます。

・・・ ただし、そこに有るのは英文になります。
本人に、日本語で論文を読み上げてもらうのが、たぶん一番間違いが少ないと思いますが(自分の書いた文章なのだから)たぶん忙しいでしょう。既に、他の研究を進めているはずです。当然ながら。

概要は、STAP QUESTの号外として物語に添える事にします。



というわけで、大人向けの情報

どこにあるのか探すのは面倒だ、という人の為のリンク

論文:Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency
著者:Takaho A. Endo*
出版日:Article first published online: 21 SEP 2014
DOI: 10.1111/gtc.12178
著作権:2014 The Author Genes to Cells © 2014 by the Molecular Biology Society of Japan and Wiley Publishing Asia Pty Ltd

Publication History
Article first published online: 21 SEP 2014
Manuscript Accepted: 12 AUG 2014
Manuscript Received: 20 JUN 2014


abstract:論文概要
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/abstract

Original Article:原著(全文)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/full

Enhanced Article (HTML)
http://onlinelibrary.wiley.com/enhanced/doi/10.1111/gtc.12178

PDF (1478K)
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/pdf

references:参考文献
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/references

Supporting Information:補足情報
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/gtc.12178/suppinfo


Quality control method for RNA-seq using single nucleotide polymorphism allele frequency

Abstract
RNA sequencing (RNA-seq) provides information not only about the level of expression of individual genes but also about genomic sequences of host cells. When we use transcriptome data with whole-genome single nucleotide polymorphism (SNP) variant information, the allele frequency can show the genetic composition of the cell population and/or chromosomal aberrations.

Here, I show how SNPs in mRNAs can be used to evaluate RNA-seq experiments by focusing on RNA-seq data based on a recently retracted paper on stimulus-triggered acquisition of pluripotency (STAP) cells. The analysis indicated that different types of cells and chromosomal abnormalities might have been erroneously included in the dataset.

This re-evaluation showed that observing allele frequencies could help in assessing the quality of samples during a study and with retrospective evaluation of experimental quality.

題名を日本語にすると、一塩基多型の対立遺伝子頻度を用いたRNA-seqの品質管理手法になると思います。

これは、「生後一週間のマウスの脾臓細胞から作成したと主張されているSTAP細胞」のほとんど全てが、8番染色体にトリソミーという通常は胎生致死になる遺伝子異常を持っていた事を明らかにした時の論文になります。

忘れている人がいるかもしれないので、日経サイエンスが「2014年6月11日」に公開した記事のリンクを置いておきます。

【号外】STAP細胞 元細胞の由来,論文と矛盾
http://www.nikkei-science.com/?p=42686
記事の本文はPDFです。

参考までにはてなブックマークもつけておきますね。
http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei-science.com/wp-content/uploads/2014/06/20140611STAP.pdf

http://b.hatena.ne.jp/entry/www.nikkei-science.com/?p=42686

ちなみにこの論文は、「STAP論文を完全に否定するもの」になりますが、同時に「公開されているサンプルデータが、実験の質の遡及評価に役立つ可能性があることを示した」論文という位置づけになります。

STAP細胞」のRNAシーケンシング(RNA-seq)データによって、「STAP細胞」の性質が評価できる事は、既に複数の大学の研究室によって同様に検証され、確認されています。


専門的な論文になりますが、「日本分子生物学会誌」に掲載された事に祝意を表して、ここにお知らせさせていただきます。

なお、ご本人は、論文をオープンアクセスにしたい、と希望されているそうです。



追記:オープンアクセスになっています。改めてここで記事にさせていただきました。

なるべく多くの人に、読んでほしい、という気持ちに敬意を表して。