それは・・・

 さて、「この前の話の続きが聞きたい」、という声に応えてkahoさんは再び話し始めたのですが、それはとても驚くようなものでした。

 『STAP』調味料を新しい方法を使って分析してみたら、それは既に世界中で広く販売されている『ES』調味料ととてもよく似ていた、と彼は淡々と話したのです。その言葉は、店の中にどよめきを引き起こし、そこにいた見慣れぬ客たちの顔を、一瞬にして厳しいものに変えました。



 実際には、それは既に料理研究家ギルド以外の研究者ギルドでも、数多くの研究者が疑っていた事でした。でも、『STAP』調味料は理研にしか存在していない、開発されたばかりの調味料です。まだ誰も、レシピから『STAP』調味料を作った人がいないので、「どうもおかしい」という所から先を確かめる事は出来なかったのです。

 でも、前にも言いましたが、kahoさんは「食品や材料の成分のデータを使って研究をする」料理研究家です。どういう方法を使ったら、どんな事が解るのか、という事を考え、新しい方法をいろいろ試しながら『STAP』調味料のデータを分析してみたんだよ、と彼は話しました。そして、誰でも使えるデータを分析した結果は、STAP調味料が作られた事はなかったという事を示していた、と。

 「だが、あんたが使った新しい方法ってのは、あんたが考えたもんで、他のやつが使った事はないんだろ? なら、結果が絶対正しいとは言えないような気がするなぁ」、という声が聞こえます。「いや、僕も同じデータを使って分析をしてみたんだけれど、どうもうまく進まなかった。彼はとても素晴らしい方法を見つけたんだと思うよ」、と話している声も聞こえます。酒場の中では再び激しい議論が始まりました。

 そして、その喧騒の中から、JuuichiJigenさんが黙って抜け出してゆきました。

STAP QUEST