そして線がつながってゆく

 同じころ、JuuichiJigenさんの店でも店主と客の探索者達の間で、次々に新しく見つかってくる『疑惑』をめぐって議論が続いていました。調味料のレシピに見つかった『おかしい』があまりに多すぎて、「このSTAPっていう調味料、本当に作ったんだろうか?」という疑問の声まで出ています。

 店の中には、外国から来ているらしい人達もいるのですが、『WWW』と『hypertext』いう仕組みを使って、「こっちではこんな事を話しているよ」と誰かに連絡していたりもします。

 おや? JuuichiJigenさんの店の『つぃーと:今入ってきた新しい情報』にkahoさんの話が出ています。さすがに早耳ですね。これまでSTAP調味料の成分表についての話は出ていなかったので、たちまち人だかりができています。「あれ? この酒場すぐ近くじゃないか。俺も行ってみようかな」という声も聞こえます。


 WWWは「アンシブル(Ansible)」みたいなものです。それは、どんな離れた所、たとえ世界の反対側に誰かがいても、隣にいる人と話すのと同じように顔を見ながら話したりできる仕組みで、船で何か月もかけて旅をしないと行けない様な所に相手がいても大丈夫、という便利な状態を作ってくれます。

 hypertextは、文字を超えるものというような意味の言葉で、「ここにビデオを入れてください」、「大事な所なので目立つ様に文字を動かしてください」、「ここは分かりにくいので、その文章についての説明が書いてある別の文章を読めるようにしてください」など、本に印刷してある文字ではできない様な事を可能にするための「ことば」です。

 自分が使う道具の仕組みを知っているのは、大事な事です。これを使ったらどうなるのかな?は、とても大切な好奇心です。もっとも「Sendmail」バグを試してみて大騒ぎ、なんて事になったら大変なので(私は実際にそれをしてしまった事があります)「sandbox:いろいろな事を試してみても大丈夫な様にあらかじめ作られた安全な場所」で試してくださいね。


 街中でも、新聞に「STAP調味料のレシピに昔のレシピの一部がそっくり使われていました」という話が掲載され、「それはおかしい」やら「でも同じ作業って何を作ってもあるよね。書き方が悪かっただけじゃないの?」やら、素人談義にも花が咲いています。


 また、国民から集めたお金・税金を使って「より安全で、より健康的な、より美味しい料理」の普及を推し進めようとしている文部料理省には、こういう事ではお金を使わせてもらえなくなる危険性がある、と考えた人がいたようで、「料理研究で事実と違う、自分に都合の良い嘘をつく」、「国民から集めたお金を自分の為に勝手に使う」などの不正が起こらないようにするため、『料理研究をする時にみんなが守る必要がある考え方』という手引書を、新しいより厳しいものにして、罰則付きで守らせようという議論が始まっていました。


 研究家達の間で不審と不満が積み重なってゆく中、理研は、3月5日に『STAP調味料の詳しい作り方』を発表したのでした。

STAP QUEST