そこは、「/.J」という名の酒場

 そこは、コンピューターになんらかの関係を持つ人達が息抜きと情報交換を兼ねて集まる、24時間眠らない酒場。誰でも飲みに入れるけれど、自分のボトルを置かない限り何度飲みに行っていても「ゲスト」としてしか扱われない。そんな場所。常連さん達は互いに顔見知りで、隅に陣取って<ひそひそ話>をしていたり、愚痴をこぼしていたりもする、/.Jはそんな場所。

 ある日、そんな酒場のドアが開き、怒っている、と一目でわかるような状態のkahoさんが入ってきたのです。彼は知り合いがいるのを見つけると隣に座りこみ、せきを切ったように話し始めました。「ちょっときいてくれよ。今日、理研がSTAP調味料の詳しい作り方を発表する、って話はきいてるだろ? でも、そんなの無意味なんだよ。だって、STAP調味料なんてどこにも存在していないんだから。」

 その時、ざわついていた酒場が静まり返ったことに、彼は気づきませんでした。



「俺達じゃわからん」

 実はこの頃には、酒場では「この間すごく騒がれてたSTAPってやつ、どうも胡散臭い、って噂が耳に入ったんだけど、何か聞いてないか?」、という会話がたびたび交わされていたのです。でも、この酒場に来ているのは元々ほとんどが「STAPって実際にはどんなもんなんだ?」という、まあ料理にはあまり縁が無い人達なので、「俺も噂はきいたことがあるんだが、さっぱりわからんな」で話が止まっていたのです。

 常連さん達は「kaho氏ならそのあたり詳しそうだし、説明も上手いから来たらちょっと聞いてみたいな」、とそれぞれ思っていたのですが、あいにくなことに彼はなかなか酒場に顔を出しませんでした。そして、やっと姿を見せたと思ったら、いきなり「STAP調味料なんてどこにも存在していない」とまくしたてたのです。

 怒りの為に周囲の状況がよく見えなくなっていた彼は気づかなかったのですが、そこに居合わせた人たちの何人かは、注意深くその話を聞き取り、一区切りついたと判断できたところで酒場を抜け出し、自分のギルドに情報を持ち帰るために、全速力で駆け出していたのです。


 それは3月5日の事でした。そして、間もなく、酒場にはそれまで見かけたことが無い人達が集まり始めました。

STAP QUEST