「ギルド」について

 では一休みという事で、今回の話の中心になっている料理研究家ギルドについて少しおさらいしてみましょう。 

 この国では、『自分たちの技能を磨き、仕事の安定を図り、社会に奉仕する』事を目的とするギルド、同業者組合によって多くの専門的な仕事が行われています。医師、商人、運送業者など、みんなが日常的に利用する事が多い仕事をしている人たちのギルドは広く知られていますが、例えば運送用の馬を育てている人たちや馬車を修理するひとたちなども、同じ仕事をする人たちだけが加入できるギルドを作っています。

 専門的な仕事では、同業者以外にはわからない苦労があったり、共同で仕入れをすることによってより質の良い材料を選べるなど、一緒に何かをする事が利益になる場面も多いからです。また、同業者達の会合では、新しい技能の習得や現在の技術の洗練などを目的とした講習や活発な意見交換が行われる事も知られています。

 もちろん自分だけで何かの仕事が完成する、という話はそう多くないので、それぞれのギルドの間では一定の交流が行われています。



 『科学の広野』で真理の探索を行う研究家ギルドの場合には、探索の対象ごとにギルドが作られています。一番大きなギルドは、いくつものギルドを束ねる『学術会議』というものです。このギルドのどっしりとした重みのある木の扉には、『私たちは、この国の人文・社会科学、自然科学全分野の科学者の意見をまとめ、国内外に対して発信する日本の代表機関です』、という文字が彫り込まれています。



 今回の話の中心になっている『料理研究家ギルド』は、自然科学という分野のギルドです。

 自然科学という分野はとても大きい分野で、遠くの星について調べて、それを星の声にして聞いてみる人がいたり、深い海の底の奇妙な生き物を調べる為に網をしかけている人がいたり、虫取り網の中の虫をのぞいて羽にある斑紋を確かめていたり、目で見ることができない『素粒子』というものを研究して、私たちが存在している不思議のなぞ解きをしようとしていたり ・・・ とてもたくさんの専門家達の為のギルドがあるのです。

 仕事に誇りを持つ、プロの共同体であるギルドでは、それぞれのギルドごとに守ることが求められる規則がいろいろ決められています。でも。いろいろな研究家ギルドが共有する大切なきまりは、「真実に対して謙虚であれ」かもしれません。それはとてもとても大切な事、自分が立っている地面のようなものなので、改めて口にされる事はほとんどないのですが。


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