要望と見解1と2

日本学術会議幹事会声明
「STAP 細胞事案に関する理化学研究所への要望と日本学術会議の見解について」

1.本年6月12日に「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)が、理研野依良治理事長に提出した「研究不正再発防止のための提言書」(以下 「提言書」)には、今回の事案の経過と原因、さらに理研CDBの今後の在り方についての詳細な考察が述べられています。日本学術会議は、野依理事長が同日「研究不正再発防止のための改革委員会からの提言を受けて」で述べたとおり、理研が「研究不正を抑止するために実効性あるアクションプランを策定し、早急に具体的な実行に移」すことを要望します。
2.「提言書」では、小保方氏の採用から、論文の発表と撤回にいたる経過の分析を踏まえて、「・・STAP問題の背景に、研究不正行為を誘発する、あるいは研究不正行為を抑止できない、組織の構造的な欠陥があった」(「提言書」5頁以下)とし、さらに、「・・STAP問題が生じて以降、理研のトップ層において、研究不正行為の背景及びその原因の詳細な解明に及び腰ではないか、と疑わざるを得ない対応が見られる」(「提言書」15頁)と指摘しています。

本事案が一研究者の不正に止まるものではなく、防止する機会が何度もあったにもかかわらず、それらを漫然と見逃し問題を巨大化させた理研CDBの指導層に、大きな過失責任があったという指摘は説得力のあるものです。日本学術会議は、理研CDBの解体を求める「提言書」に対する理研の見解が早急に示されることを要望します。

 6月12日に「研究不正再発防止のための改革委員会」(岸輝雄委員長)が、理研野依良治理事長に提出した「研究不正再発防止のための提言書」はとても長い文書です。既にそれから40日以上が経過しています。

 その間、「改革委員会」の指摘が放置されていたとは思いたくありませんが、理研は「研究不正を抑止するために実効性あるアクションプランを策定し、早急に具体的な実行に移す」、という行動をとっていません。(とっていないので、このようなはっきりした言葉で要請されているのです。)


 例えば、この要望と見解が出された前日には、研究を担当する理研の川合真紀理事が「研究不正を誘発する構造的欠陥があったとして、センターを早急に解体すべきだ」とした「改革委員会」の提言を否定しています。もちろん、守るべきは「理研CDB」という不正を引き起こした組織ではなく、そこで研究を続けている個々の研究者だ、という事は「改革委員会」によって言及されています。

 報道によると川合真紀理事は、「刷新という方が正しい」との認識を示して、「理研CDB」の解体を否定したそうですが、既に長期間にわたって問題を放置し続けた人達が「刷新」という行動をとれるかどうか、非常に危ぶまれます。


 解りやすいように、「改革委員会」の提言を添えておきます。

 幹部の責任意識が低く、研究不正を防げなかった組織の構造的な欠陥を改めることは困難と判断した。

 センターは日本を代表する再生医療研究の拠点。改革委は解体の意味について、再生医療研究を続けるかどうかを再検討し、理研内の他の研究拠点との統合も視野に入れるなど、抜本的な出直しを図ることと説明している。こうした事態を招いた責任は重いとして、竹市雅俊センター長と笹井芳樹副センター長は更迭すべきとした。

 さらに理研本部が、STAP論文の徹底調査を避けていることを問題視。「事実解明に関する積極性を欠き、責任の所在が明らかになることを恐れている」と指摘し、隠蔽体質があるとの見方を示した。コンプライアンス(法令順守)担当の米倉実理事と、研究担当の川合真紀理事を交代させるべきとした。(読売新聞 2014年6月12日より引用 http://www.yomiuri.co.jp/science/20140612-OYT1T50144.html

 また、理研の理事の発言の中には「自分が不祥事が生じた会社の当事者」であり、「せっせと頭を下げて、あちこちお詫びをして歩く」立場にある、という普通の感覚が皆無な、他人ごとのようにそれを批判する発言がよく見られます。当たり前ですが、「皆様の税金によって研究を支えていただいている私たちの所で、このような不祥事が起きてしまって、本当に申し訳ありません」、という態度は最低限必要だと思われます。


大事な文書は「普通のテキストで!」という常日頃からの主張に基づいて、これまでも日本学術会議やそれぞれの学会の声明はブラウザで読めるテキストとして転載してきました。なるべく多くの人達に読まれるべきだ、という考えに基づくものです。
以前と同様に、子供でも少し説明されればわかる様に、説明の文章とリンクをつけています。

続く
STAP QUEST