STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について

日本学術会議会長談話
STAP 細胞をめぐる調査・検証の在り方について

日本学術会議は、声明「科学者の行動規範−改訂版−」(平成 25 年1月 25 日)や、提言「研究活動における不正の防止策と事後措置−科学の健全性向上のために−」(平成 25 年 12 月 26 日)を公表し、科学研究の健全性向上に努めてきました。しかし、再び、今回のような日本の科学界に対する信頼を国内外で揺るがす問題が発生したことは、その努力が未だ十分ではないことを示しているものと改めて認識し、健全性向上のために一層の活動を行わなければならないと考えます。その上で、本件について、まずは当該機関による調査によって、真実が早く明らかになることを強く期待します。


本件では、本年1月 29 日に理化学研究所から、生命科学分野における画期的研究成果として、STAP 細胞作製の成功に関わる論文の報道発表が行われました。しかし、Nature 誌に発表された当該論文に対して、報道発表直後から種々の疑問点が指摘され、2 月半ばに理化学研究所が「研究論文の疑義に関する調査委員会」(以下、「調査委員会」という)を設置して調査を開始するに至りました。

日本学術会議は、本件に重大な関心を持ちつつ、当該研究機関である理化学研究所による調査の推移を見守ってきました。3 月 14 日に公表された調査委員会の中間報告では、調査の対象とされた 6 項目のうち 4 項目で執筆者による不適切な行為が認められ、不正行為の存在を否定するには至りませんでした。その意味で、この中間報告は極めて深刻なものです。理化学研究所が、調査の継続によって、これらの 4 項目に関わる不正行為の有無をできるだけ早い機会に明らかにするとともに、STAP 細胞が作製できたのか否かという本論文の核心についても調査の対象として解明することが必要であると考えます。

また、今回、研究不正の疑いが生じた件に対して理化学研究所が調査委員会を設置して調査に当たっていることは評価できるものの、調査委員会の構成が明らかにされておらず、委員長も内部の方が務めるなど、その的確性や透明性において必ずしも十分とは言い難い面があると考えます。

これらを踏まえ、今後の調査に当たっては、理化学研究所において、下記の点に留意されることを要望します。


(1) 中間報告で不正行為の存在を否定するに至らなかった 4 項目について、今後どのような調査を行い、いつごろまでに結論を得るのかのスケジュ
ールを示すこと。
(2) 調査に当たっては、外部のどのような職にある方が調査委員会に加わっているのかを示し、特に調査の中立性の観点から、委員長は外部の方に
依頼することが望ましいこと。
(3) 本論文の核心である STAP 細胞を作製したという科学的主張の妥当性について、必要に応じて新たな態勢をとって検証すること。
(4) 今回の論文については、発生・再生科学総合研究センター(CDB)の幹部職員が共著者に加わり、当初、理化学研究所として成果をアピールしたにもかかわらず、既に中間報告でも多くの不適切な点が明らかにされていることから、研究実施及び論文作成・発表の過程における理化学研究所の組織ガバナンスの問題について検証すること。

平成 26 年 3 月 19 日
日本学術会議会長 大西 輶