モノローグ:ノード

6次の隔たり:6 Degrees of Separation」

 これは、以前のBlogで紹介した話の一つです。元々の実験は1967年に行われた社会実験でした。ある手紙を遠く離れた見知らぬ人に手渡しで届けてゆく、という社会実験で、成功した事例での手紙が何人の手を経ていたのか、という数字です。それ自体はあまり信頼性のある数字ではありません。「映画俳優たちの間で見られるベーコン指数」なども「世間は狭い」例示として有名です。

 今回興味深いのは、wwwに見られる情報拡散の為の「人間(ノード)」でしょうか。kahoさんの書いた最初の文章に初コメントが入るまでに数十分。ごく専門的な指摘が入り始めるのが3時間ほどのち。/.J上の記事の常として、その後は興味深いコメントが投稿された場合にのみ、再び議論が始まる、という流れで記事内の話は進んでいます。

 生物学の議論の場としてはたぶんほとんど認識されていなかった/.Jというサイトの、さらに目立たぬ領域である個人スペースに書かれたkahoさんの記事。それをJuuichiJigenさんが探知して情報拡散を始めたのが、記事が投稿された12時間後です。記事を探知した状況に非常に興味をひかれます。JuuichiJigenさんは、その後も連続してkahoさんの記事を追い続け、内容を吟味し、時にはkahoさんの主張のミスを見つけ、研究の捏造を強く示唆する重要な情報として拡散し続けてました。



 情報発信者として『強い』人は確かに存在しますが、非常に多数の人達に共有される情報という意味では、少数の特別の事例を除けば要因は情報発信者の能力よりは「情報の内容の興味深さ」により大きく依存するように思えます。また、取り上げられた記事が非常に興味深いものであった場合にも、その賞味期限はとても短かったりします。

 例えば、「新品iPhoneのメモリー内に笑顔の女性作業員が!!」という話が爆発的に広がった事がありました。(読める記事:AFP) 中国にある組み立て工場で、きちんと製品が動作するかどうかテストする為の過程で撮影されたとおぼしき写真が、消去されないまま販売ルートに乗ってしまったらしい、という話でした。写っていたのがとてもチャーミングな若い女の子だった事もあって、それは非常に高い注目を集めることになりました。

 その話が、人々の記憶から消えるのに長い時間は必要ありませんでした。今、その話を覚えている人がどれだけいるか ・・・ 世界は実はとても小さく、いろいろな事が瞬時に全世界で共有されてゆく、という話ですし、それが消えてゆくのもとても速いのだ、という事が解ります。


 結局、『強い発信者』というのは「興味深い事例・旬の事例を的確にみわけられる人」という事のようなのですが、The Strength of Weak Ties ・・・ ネットワークについての話、「スモールワールド」なども浮かんできて、この事例はいろいろ面白いですね。